一面にひろがる田んぼや沼地、その間をぬうように、幾筋も小さな川が、流れています。
春日村下之郷のお城は、田んぼの中の小さなお城です。
お城の殿様は、とても弓の上手な方です。それに、鳥を撃つことが大好きな方です。今日は、小川に遊ぶ水鳥を狙い、明日は、田んぼの空を飛ぶ村鳥を射落とし・・・・・・・・・といったように、毎日出かけます。
ある日のこと、
「殿様、あそこにオシドリが・・・・・・・・・・・・。」
家来の一人が、ヨシの葉陰に寄り添っている二羽のオシドリを見つけました。
「殿様の腕前なら、二羽一度に、射止めることも出来ましょう。」
「いやいや。そう、うまくいくかどうか・・・。」
殿様は、狙いを定めて、矢を放ちました。
「ヒューッ。」
その時です。雄のオシドリが、羽根を広げたかと思うと、雌のオシドリを、さっと押しやりました。
矢は、雄のオシドリの胸元を射抜きました。助かった雌のオシドリは、悲しそうな鳴き声を残して、逃げていきました。